腹痛について
「お腹が痛い…」
腹痛は誰にでも起こる身近な症状ですが、実は重い病気が隠れていることもあるため、注意が必要です。
救急外来や内科外来でも、腹痛を訴えて来院される方は非常に多く、中には緊急入院となる方もいます。今回は、腹痛の原因や受診の目安についてお伝えします。
腹痛の原因は「痛む場所」によって異なります
お腹の中には、胃や腸、肝臓、腎臓など多くの臓器が詰まっており、「腹痛」と一口に言っても原因はさまざまです。
まず腹痛の原因を探るうえで重要なのが、「どこが痛むのか」というポイントです。お腹を以下のように6つのエリアに分けて考えると、ある程度、原因が絞られます。
- 右上(右季肋部):胆石症、胆のう炎、腎盂炎 など
- みぞおち(心窩部):胃炎、胃・十二指腸潰瘍、膵炎、心筋梗塞 など
- 左上(左季肋部):脾臓の病気、腎臓の病気 など
- 右下(右下腹部):虫垂炎(盲腸)、尿管結石、婦人科疾患 など
- 左下(左下腹部):大腸炎、憩室炎、婦人科疾患 など
- 下腹部全体:膀胱炎、月経痛、子宮外妊娠 など
痛む場所を把握することは、医師の診断にも大きな手がかりとなります。
腹痛の「経過」や「症状の種類」も大切なポイント
腹痛の原因を判断するには、痛みの経過や周辺症状も重要です。
▷ 急に始まった激しい痛みの場合
急性の腹痛では、腹部大動脈瘤の破裂、虫垂炎、腸閉塞、膵炎などが疑われ、命に関わるケースもあります。初回で強い痛みがある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
▷ 慢性的に続く腹痛の場合
何週間も痛みが続くような慢性腹痛では、過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアなど、ストレスや生活習慣が関与する病気が多く見られます。
危険な腹痛のサインとは?
以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関の受診をおすすめします。
- 痛みがどんどん強くなる
- お腹を押すと強い痛みがある(反跳痛)
- お腹が硬くなっている
- 発熱、頻脈(脈が速い)、血圧の低下、呼吸が速い
- お腹が異常に張っている
- 吐血や黒い便が出る
- 嘔吐が続く、または食事が摂れない
これらは腹膜炎や腸の穿孔、重度の感染症などの重大な病気のサインです。
主な腹痛の原因となる病気
• 消化器の病気
- 急性胃腸炎:ウイルスや細菌が原因。腹痛・下痢・嘔吐を伴います。
- 虫垂炎(盲腸):右下腹部が痛む。手術が必要になることも。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍:みぞおちの痛み。進行すると出血や穿孔のリスク。
- 胆石症:右上腹部の激痛。脂っこい食事で悪化。
- 腸閉塞:腸が詰まり、激しい腹痛と膨満、嘔吐を引き起こします。
- 膵炎:上腹部から背中への強い痛み。アルコールや胆石が原因のことが多いです。
- 心筋梗塞:胸の痛みだけでなく、みぞおちの痛みとして現れることも。
- 尿路結石:わき腹から背中にかけて激痛。血尿を伴うことも。
- 子宮外妊娠:妊娠検査陽性で腹痛がある場合は特に注意。
- 月経困難症、子宮内膜症:下腹部痛や腰痛を伴うことがあります。
生活習慣も腹痛の原因に
食べ過ぎ・飲み過ぎ、不規則な生活、ストレスなども腹痛を引き起こす要因になります。とくに胃腸が敏感な方は、生活習慣の見直しが予防につながります。
こんな時は、すぐに受診を!
以下のような症状がある場合は、できるだけ早めにご相談ください。
- 耐えがたいほどの腹痛
- 突然始まった強い痛み
- 吐き気や嘔吐、下痢が止まらない
- 数日経っても改善しない腹痛
- 発熱や血圧の低下を伴う
当院での診断体制について
当院では、腹痛の原因を見極めるために、以下のような検査を迅速に行うことが可能です。
- 血液検査
白血球数やCRP(炎症の程度)、D-ダイマー(血栓のリスク)などを即日で測定できます。
これにより、体内の炎症や感染の有無、腹部大動脈解離や大動脈瘤破裂の可能性などを素早く判断します。 - 腹部エコー検査(超音波検査)
痛みを伴わず、胆のう・肝臓・腎臓・膀胱・婦人科臓器などの状態をその場で確認できます。
胆石や腎結石、尿閉などの診断にも有用です。 - 腹部CT検査
より詳しい画像診断が必要な場合には、CTでお腹の臓器の状態を立体的に評価します。
虫垂炎や腸閉塞、腹腔内出血、腫瘍性病変の発見にも役立ちます。
※当院では内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)は実施しておりませんが、必要に応じて専門医療機関をご紹介いたします。
当院では…
当院では、腹痛の原因を詳しく調べ、必要に応じて適切な治療や専門機関への紹介を行っています。
「お腹の痛みが気になる」「市販薬では治らない」そんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。