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帯状疱疹(たいじょうほうしん)について

〜早期の対応と予防が大切です〜

「皮膚に赤い発疹と強い痛みが出てきた」「水ぶくれが帯状に広がっている」――こうした症状が現れた場合、帯状疱疹の可能性があります。帯状疱疹は、比較的よく見られるウイルス性の皮膚疾患で、特に50歳以上の方や免疫力が低下している方に多くみられます。

典型的な水ぶくれができた方の多くは皮膚科を受診されますが、痛みが先行し、その後に水ぶくれを含む皮膚症状が出てくる経過が多いため、当院を含めた内科を受診されることも少なくありません。当院では、頭頸部に発症した場合は視力障害や顔面神経麻痺などの合併症を引き起こす可能性を考慮し、専門施設へご紹介いたしますが、それ以外の部位では早急な投薬が必要となるため、当院にて対応しております。

この記事では、帯状疱疹の原因や症状、診断、治療法、そして2025年4月から全国で本格的に始まったワクチン助成制度についても、わかりやすく解説します。

 

なぜ起こる? 帯状疱疹の原因

帯状疱疹の原因は「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」です。これは子どものころにかかる「水ぼうそう」と同じウイルスです。水ぼうそうが治ったあとも、ウイルスは体内の神経節に潜んでおり、加齢やストレス、疲労、病気などによって免疫力が低下したときに再活性化し、神経を伝って皮膚に症状を引き起こします。

 

主な症状と特徴

最初は皮膚に異常がないのに、ピリピリ・チクチクとした痛みやかゆみが出ることが多く、数日後に赤い発疹や水ぶくれが神経の走行に沿って帯状に現れます。よく見られる部位は、胸や腹部、背中、顔、頭などです。足の痛みを訴えて最初に整形外科を受診されたケースもあります。

顔面や目の周囲にできた場合は、視力障害や顔面神経麻痺などの合併症を引き起こすことがあり、注意が必要です。症状の出方や痛みの程度は人によって異なりますが、早期の診断と治療が後遺症のリスクを減らすために非常に重要です。

 

どうやって診断するの?

帯状疱疹の診断は、皮膚の症状(発疹・水ぶくれ)と痛みの部位から総合的に判断します。典型的な症例では、問診と視診だけで診断がつくことが多いですが、初期の段階では発疹がはっきり出ていないこともあり、他の皮膚疾患との区別が難しい場合もあります。

最近では、ウイルスのDNAを検出する検査(PCR検査)や抗原検査などを用いて、より正確に診断できるようになっていますが、当院では当該検査は行っておりません。

 

治療について

帯状疱疹の治療は、できるだけ早く抗ウイルス薬を使うことが基本です。発疹が出てから72時間以内に治療を始めると、症状の軽減や神経痛などの後遺症(PHN)を防ぐ効果が高くなります。

主な治療薬(経口抗ウイルス薬)とその作用機序


アメナリーフの特長:

アメナリーフ(アメナメビル)は、これまでの抗ウイルス薬とは異なる作用機序を持つため、他の薬剤に耐性を持ったウイルスに対しても効果が期待されています。また、1日1回の服用で済むため、服薬アドヒアランス(飲み忘れ防止)にも優れています。さらに、排泄経路が主に糞便であるため、腎機能を気にせずに使用できる点も利点です。

このように、現在は複数の治療薬から、患者さんの年齢、腎機能、服薬のしやすさ、ウイルスの耐性状況などに応じて選択が可能です。早期に受診し、適切な薬を選ぶことが治療の成功の鍵となります。

重症例や免疫力が著しく低下している場合には、点滴による治療(静脈投与)が必要になることもあります。また、痛みに対しては鎮痛薬や神経痛に効果のある薬を併用することもあります。

 

帯状疱疹後神経痛(PHN)とは?

帯状疱疹が治ったあとも、神経の損傷が原因で痛みが長く続くことがあります。これを帯状疱疹後神経痛(PHN: Postherpetic Neuralgia)と呼び、特に高齢者でリスクが高いとされています。

PHNは数か月から年単位で続くことがあり、日常生活の質を大きく下げてしまいます。だからこそ、「かからないこと」「重症化させないこと」がとても重要なのです。

 

ワクチンによる予防とその選択肢

帯状疱疹を予防するためには、ワクチン接種が有効です。現在、日本で使える帯状疱疹ワクチンには以下の2種類があります。

① 生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン)

  • 対象年齢:50歳以上
  • 接種回数:1回
  • 効果:発症予防効果は約50〜60%、持続期間は5年程度
  • 副反応:接種部位の腫れや発熱など。まれに重い副反応が出ることもあるため、免疫力が低い方には推奨されません。

② シングリックス®(不活化ワクチン)

  • 対象年齢:50歳以上(免疫低下状態の18歳以上も対象)
  • 接種回数:2回(2か月間隔)
  • 効果:発症予防効果は90%以上、10年以上効果が持続するとされています。
  • 副反応:接種部位の痛み、筋肉痛、倦怠感、発熱など。2回目の方が反応がやや強い傾向がありますが、多くは数日でおさまります。
  • メリット:免疫力が低下している方にも使用できる点が大きな特徴です。

 

2025年4月からワクチンの公的助成がスタート!

これまで帯状疱疹ワクチンは全額自己負担でしたが、2025年4月からは国および各自治体による定期予防接種の任意接種枠での費用助成が始まりました。自治体によって助成の範囲や自己負担額は異なりますが、多くの地域でシングリックスを含む接種費用の半額〜全額補助が受けられるようになっています。

ワクチン接種を希望される方は、かかりつけ医や自治体のホームページなどで詳細を確認されることをおすすめします。

 

まとめ

帯状疱疹は、誰にでも起こり得る病気ですが、早期発見と適切な治療、そしてワクチンによる予防で、重症化や後遺症を防ぐことが可能です。50歳を過ぎたら、帯状疱疹ワクチンの接種を積極的に検討しましょう。少しでも症状が気になる方は、早めに医療機関を受診することが大切です。