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弁膜症について

心臓弁膜症

 

心臓には4つの区画(左右にそれぞれ心房と心室)があり、各区画を隔てる弁が4つあります(大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁)。これらの弁は血液を順に送り出すために交互に開閉していますが、弁が硬くなって開きが悪くなったり(狭窄)、あるいは完全に閉じることができなくなったりと(閉鎖不全)、本来の弁の働きができなくなった状態を弁膜症と呼びます。30年近く前に私が自治医科大学で循環器診療をはじめた頃はリウマチ性僧帽弁狭窄症という弁膜症が多かったのですが、今では激減し、代わって社会の高齢化に伴い大動脈弁狭窄症が増加しています。弁膜症の根治治療は外科手術が一般的ですが、ご高齢で手術ができない場合は、投薬治療を選択せざるをえませんでした。しかし、近年、カテーテルにより人工大動脈弁を留置するTAVI法や僧帽弁にクリップをかけて逆流を減らすMitral Clip法などの画期的な治療法が開発され、ご高齢の患者さまや手術が不可であった患者さまに福音をもたらしています。

 

Q. 症状にはどのようなものがありますか?

軽症の場合はほとんど症状が現れませんが、進行すると心不全症状が出現します。

 

Q. 診断方法は?

弁膜症では心雑音が確認できます。健康診断で心雑音を初めて指摘される方が多くいらっしゃいます。心電図、胸部レントゲン撮影の結果を参考とし、心臓超音波検査(心エコー)で診断が確定します。

 

Q. 治療方法は?

軽症や無症状の場合は経過観察ないしは心不全に準じた内服治療が行われます。しかし、弁膜症の根治治療は外科手術であることから、症状の経過を把握して心臓血管外科にご紹介するタイミングを適切に判断することが治療にとって最も重要です。現在、特に患者数の増加が著しい大動脈弁狭窄症に対しては、上述のTAVI法が外科手術と遜色ない成績を挙げており、主流になりつつあります。また、僧帽弁に異常がある場合、以前は手術のリスクが高く、緊急性がある場合を除いて人工弁置換手術の時期を遅らせる傾向にありました。しかし、現在はなるべく心臓が変形する前の段階で、緩んだ弁の構造部分を縫い縮める形成手術も選択されるようになってきました。また、僧帽弁閉鎖不全に対しては上述のカテーテルにて弁をクリップ留めするMitral Clip法により逆流を抑えることが可能になりました。このように手術技術の進歩により手術の選択肢が増えています。当院では最新の治療について常に情報のアップデートし、患者さまに最適の治療法を推薦できるよう努めております。

 

※より詳しい解説は日本循環器学会のホームページでご覧いただけます。

→ https://www.j-circ.or.jp/sikkanpg/case/case6/