狭心症・心筋梗塞
狭心症や心筋梗塞は、心臓を栄養する冠動脈の硬化により引き起こされる病気です。動脈硬化の危険因子である、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の患者さんや家族歴がある方、喫煙歴のある方は、これらの病気を発症する可能性が高めです。狭心症は冠動脈の壁が厚くなって血流が減少し、胸の痛みが起こる病気です。一方、心筋梗塞は冠動脈内に血の塊(血栓)が形成され、血流が急激に遮断される病気です。後者は心臓の筋肉(心筋)が不可逆的な損傷を受けるため、より深刻な病気です。
狭心症と心筋梗塞ではいずれも典型的には胸の痛みが生じます。狭心症は、心臓に負荷がかかる運動時に発生することが多く、一部の症例ではストレスがかかったときや夜間の安静時に冠動脈が痙攣(冠攣縮)して痛みが生じることもあります。一方、心筋梗塞は突然の発症が特徴であり、痛みの持続時間も長くなります。痛みの性状は個人によって異なり、胸の圧迫感や放散痛、喉の痛みなどがあります。また、息切れや嘔吐、意識の混濁などの症状も現れることがあります。心筋梗塞では致死的な不整脈や心不全、ショックを合併することがあり突然死に至ることもあります。
Q. 診断方法は?
多くの場合、発作時の心電図検査で狭心症や心筋梗塞の診断が可能です。しかし、狭心症では発作がおさまると心電図は正常化してしまいます。また、心筋梗塞が疑われても心電図ではっきりしない症例もあり、その場合は血液検査によるトロポニン値の測定を行い、異常高値を認められるか確認して判断します。症状が重い場合は、専門病院に救急搬送されますので当院に来院されることはまずありません。しかし、痛みが軽い、あるいは症状がはっきりしない患者さまが当院を受診される場合が実際にあります。心筋梗塞の疑いがあれば、ただちに専門医療機関へ救急搬送しています。最終的には冠動脈造影検査で診断が確定します。
Q. 治療方法は?
急性期は専門医療機関で治療が行われます。冠動脈造影検査によって血管の状態が評価され、必要に応じて冠動脈インターベンションと呼ばれるカテーテル治療によって血行再建が行われます。この手術では、ステントと呼ばれる金属製の器具が血管内に挿入して、血管を拡張します。急性期管理の後、薬物療法により再発を予防します。血栓の予防には抗血小板薬が処方され、心機能が低下してしまった方にはβ遮断薬、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬が処方されます。両疾患の原因である動脈硬化は冠動脈に悪玉コレステロールが蓄積するのが主要因ですので主にスタチンという薬剤が処方されます。喫煙者や糖尿病のある方はその管理を適切に行なっていくことも治療にとって重要です。